〜16歳の少女が遺したもの〜
『よっちゃんのクレヨン』は、従兄弟の娘千恵ちゃんが、膠原病という難病と闘いながら病床で書き上げた作品です。そして彼女の死後、貴重な作品は鮮やかな一冊の絵本となって出版されました。 私は『生と死』について、幼児期から子供達に話すことにしています。教室で私は子供達に、何度も何度も繰り返し『よっちゃんのクレヨン』を読みきかせてきました。目をキラキラさせながらお話を聞いている子供たち。子供たちの心の中に、この作品は今も力強く生き続けています。
よっちゃんは、不思議なクレヨンを持っています。イチゴ、ブドウ、みかん、・・・よっちゃんのクレヨンは、描いたものが絵の中から飛び出してきます。よっちゃんは、次々と飛び出してきた果物を、遊びにきた動物たちにわけてあげます。そして、ミドリのクレヨンでおいしそうなメロンを描いたとき、くまさんがやってきます。よっちゃんは、くまさんにメロンをあげるのを迷います。でもくまさんがメロンが欲しくて泣くので、可哀想になってあげてしまいます。最後に残ったクレヨンは黒。死と向かい合っていた16歳の千恵ちゃんにとって、黒いクレヨンは死を意味しているようにも思えます。よっちゃんの目から涙がこぼれます。しかし驚いたことに、物語はこの黒いクレヨンから素晴らしい展開をみせます。よっちゃんは最後に残った黒いクレヨンで、大きなお花の種を描きます。よっちゃんが種に水をかけると、黒い種はひまわりの大輪となって花開きます。太陽の花ひまわり! それは、残された時間を力強く生きた千恵ちゃん自身ではないでしょうか。
『いろんなことに
つまずいてばかりの私
人間は いつだって
イヤなことから逃げられないの
でも、そのイヤなことに負けたら
そこで そのひとの人生はおしまい
つまずいても ころんでも
たちあがって
一緒に 歩いていこうよ
今しか できないことって
いっぱい あるよ
その輝きを 失わないように……』 (小林千恵)
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