ユウくんは、外遊びが大好きな5歳の男の子です。なかなか椅子に座っ てお話を聞くことができません。ユウ君のママが注意すればするほど、 ユウ君はヒートアップしていきます。けれどユウくんは決してお話が嫌 いな訳ではないのです。
今日もユウ君はピアノの上に登り、棚の上に登り、棚の上からジャン プ! そしてミニカーを持ってトンネルの中へ入りました。こんなとき 「出てきなさい!」と言えば、「やだよ!!」と言う返事が返ってくる ことは明らかです。仮に無理矢理トンネルから引きずり出したとして も、まずいい結果にはなりません。実はユウくんにとってトンネルは、 心理的に落ち着く特別な場所なのです。机では落ち着いてできない作業 も、トンネルの中ならユウ君は落ち着いてすることができるのです。そ れで「トントン、ここはユウくんのお家ですか?」と声をかけると「ヤ ドカリさんのお家だよ」とトンネル中から可愛らしい返事が返ってきま した。「ヤドカリさん、郵便です」と言うと「何が届いたの?」と目を キラキラさせてトンネルの入り口近くまでやってきました。「お話の宅 急便です。」と言うと「何のお話?」と興味津々です。「『ジャックと 豆の木』この豆の木はね、ただの豆の木じゃなくて天まで続いてるの… 豆の木を登って行くとね、雲の上のお家につくのよ。」「誰のお家? ユウタも登れる!」とトンネルの中から、夢中で絵本を見つめている可 愛らしいヤドカリさん。
子供には子供の世界がある。力ずくで何かをしようとしても子供のハー トは掴めません。『北風と太陽の教訓』は、まさに育児に当てはまるこ となのです。
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